主だった実験によれば、黄色ブドウ球菌・大腸菌・MRSA・サルモネラ・腸炎ビブリオなどの菌に対して、高い抗菌効果が示されるデータがあります。
昔からお正月の時期におせち料理を漆塗りの重箱に入れて保管するのも、雑菌による腐敗を防ぎ、少しでも日持ちさせるためだと言われています。
新型コロナウイルスに関する研究結果
そして今回、福井県で漆の販売を行っている株式会社箕輪漆行様より、漆に新型コロナウイルスを減少させる効果があることを確認したとの報告がありました。漆を塗ったアクリル板に新型コロナウイルスを接触させ、24 時間後に数を確認したところ、塗っていないものに比べて99.9 %以上ウイルスが減少したとのことです。
詳細については、以下の引用をご覧ください。
試験概要
一般財団法人日本繊維製品品質技術センターにおいて、当社の漆を塗布した試験板で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス効果を検証した結果、その効果が確認されました。
本検証試験方法は、図1「ISO21702 プラスチックおよびその他の非多孔質表面の抗ウイルス活性の測定」の準用で、漆塗板と未加工の試験板上にウイルスを接触させ24 時間後、試験板から回収したウイルスの感染価(細胞感染性を持つウイルス粒子の数)を測定するもので、未加工品と比べ漆塗板の方が99.9%以上新型コロナウイルスの減少したことが確認されました。図2参照
(1)試験機関:一般財団法人日本繊維製品品質技術センター(国指定検査機関)
(2)試験方法:ISO21702 プラスチックおよびその他の非多孔質表面の抗ウイルス活性の測定
(3)試験ウイルス :Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(新型コロナウイルス)
(4)試験素材:アクリル板50mm×50mm 未加工,漆塗布(塗布後140 日経過した物)
(5)結果 :ウイルス減少率99.9%以上
2021年8月25日 株式会社箕輪漆行「新型コロナウイルス 99.9%以上減少」より引用この実験を見る限りでは、漆を塗った表面の新型コロナウイルスは24時間以内にそのほとんどが死滅しています。
名古屋大学総合保健体育科学センターのホームページによれば、
「物の表面に付着したウイルスは、紙では3時間、銅(コイン)では4~8時間、段ボールでは1日、木や布では2日、ガラスや紙幣では4日、プラスチックやステンレスでは7日経過までに死滅します。」
とあります。日常的な感染リスクに対して漆器にどこまでの有用性があるかは微妙ですが、少なくとも漆塗りではない木製やプラスチック、ステンレスの食器に比べて抗ウイルス効果が高いことは間違いなさそうです。
もちろん感染防止のためには、手指消毒やマスク着用などの基本的な対策が必要であることは言うまでもありません。
ですが、こんなニュースをきっかけに漆器に興味を抱いてくださる方や、日常に漆器を取り入れてみようと思ってくださる方が一人でも多くなれば、漆器屋の端くれとしては嬉しい限りです。